Frutiger Aeroについて必要な情報を簡潔にまとめたページ。余計な情報は少なく、必要な情報は網羅しています。入門にもいいですし、布教にもおススメ。
Frutiger Aeroざっくりまとめ | 🫧🐠🌿🩵 |
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Frutiger Aeroとは? | 2004年から2013年頃に流行した特徴的なデザインスタイルを指す。主に、光沢感や立体感のある「スキューモーフィズム」のデザインと、草原、熱帯魚、青空、泡など、自然をテーマにした要素を多用することが特徴。また、この時期に流行していたゲームのシステム音やサウンドトラックも、その懐かしさから再評価され、Frutiger Aeroというジャンルに分類される。 |
起源 | 2004~2013 |
キーワード | スキューモーフィズム、熱帯魚、水、地球、草原、青空、自然、ボケ 、泡 、オーロラ、光沢のあるテクスチャー 、フルーティガー・フォント 、 ガラス 、Nintendo DS、Apple、 Microsoft、 Windows XP 、 Windows Vista, Asadal Design |
カラー | 青、緑、白 |
サブジャンル | Helvetica Aqua Aero Frutiger Aurora Dark Aero Technozen Four Colors DORFic Vectorgarden Bright Tertiaries Frutiger Metro |
関連する美学 | Y2K Futurism, Frutiger Metro, McBling |
Frutiger Aeroとは?
- Frutiger Aero(フルティガー・エアロ)は、2004年から2013年に流行したデザインを指す。
- 光沢感や立体感のあるスキューモーフィズムと、草原、水、熱帯魚、青空、泡など、自然をテーマにした要素を多用することが特徴。
- ノスタルジックな感覚を呼び起こしつつも、近未来的なビジュアルが魅力でTiktokを中心に人気になり、当時のゲームのシステム音やサウンドトラックも一緒に、Frutiger Aero関連の動画で再注目されている。
- Y2Kの1997年から2004年頃の文化へのノスタルジアであるとすれば、Frutiger Aeroは2000年代後半から2010年代初頭の文化へのノスタルジアである。
デザイン
スクリーン内のアイコンやボタンなどのUIを、現実世界のものに似せて作る「スキューモーフィズム」が使用されている。また、草原、熱帯魚、青空、雲などの自然要素が多く取り入れられているのが特徴。
これらは、まだパソコンやスマートフォンが生活の身近になかった時代、無機質なスクリーンの中に現実世界の要素を取り入れることで、人々に親しみを与えて機器を使いやすくすることができたと考えられる。
光沢感:ガラスのような反射や滑らかなグラデーションを多用。
自然テーマ:草原、青空、熱帯魚など、心が和むような自然の風景が背景に使われる。Frutiger Aero関連でよく目にするこれらの画像は、韓国のデザイン会社、Asadal Designのフリー画像が元である。
↓AsadalデザインがPixtaに掲載しているフリー画像たち。Frutiger Aeroデザインの宝庫なので、Frutiger Aero好きはテンション上がるかも。ここで画像を「お買い物」しても良いかもしれない。
立体感:UIやアイコンにはスキューモーフィズムが採用され、まるで実物のような立体感がある。
カラーパレット
イラストやデザインの参考にどうぞ
音楽
Frutiger Aeroの曲を、音楽的に一概に定義するのは難しいが、特に2004 年から 2013 年あたりの、任天堂やPS Vitaなどのゲーム機のシステムサウンドやサウンドトラックがよく取り上げられる。ゲームで長時間繰り返し流れていても疲れないような、穏やかでリラックスしたサウンドと言えば良いかもしれない。以下が特徴的なポイントとなる。
- 2004 年から 2013 年にテレビやゲーム、広告で使われていた雰囲気
- 明るくて心地よいサウンド
- 清涼感のあるサウンド
- シンセサイザーのインストゥルメンタル
LEASE – 阿保剛
阿保剛の「LEASE」は、Frutiger Aero関連の動画で一番と言っていいほど多用されているため、Frutiger Aeroの代表曲といっても過言ではない。
阿保剛は、日本のゲーム音楽作曲家で、恋愛アドベンチャーゲームのbgmを多く手掛けた方である。この「LEASE」は2002年のドリームキャストのゲーム、「My Merry May 」のbgm。
Wii メニュー BGM
Frutiger Aeroの曲には、Wiiのメニュー画面BGMのようなシステム音も含まれる。
aquatic ambience – scizzie
Frutiger Aeroの曲には、最近リリースされたオリジナルの楽曲も多い。2022年リリースのscizzieの「aquatic ambience」はDavid Wise(デヴィッド・ワイズ)が手掛けた「スーパードンキーコング」の同名のBGMに影響を受けている。
Frutiger Aeroの曲一覧
- Lotus Waters (sped up) – ゆめにっき BGM
- Flim – Aphex twin
- LEASE – 阿保剛
- Album – Nintendo 3DS カメラ BGM
- Zen Garden – Plants vs. Zombies BGM (ローラ・シギハラ)
- Wii メニュー BGM
- Azure Garden Crystal Chamber – ゆめにっき BGM
- Droopy Likes Your Face – C418
- Wii Fit Plaza – Wii Fit BGM
- Introduction – Mirror’s Edge BGM
- Aquatic ambience – スーパードンキーコング BGM(デビッド・ワイズ)
- Roblox 3008 OST – Friday Theme
- Full Theme – The Homebrew Channel
- Avalonia – Little Big Planet 2 BGM
- Aquatic Ambience – scizzie
- WiFi メニュー -マリオカート Wii BGM
- PilotRedSun – Bodybuilder (Shorter Version)
- June 2011 – Nintendo 3DS eShop BGM
- PS Vita メニュー BGM
- Menu Banner Them – Wii Shop Channel BGM
- Avatar Theme Song – Xbox 360
- Zombies on Your Lawn – Plants vs. Zombies BGM(ローラ・シギハラ)
- Camera Album – Nintendo DSi BGM
- Mii Editor – Nintendo Wii U Miiスタジオ BGM
- 2008 Toyota Corolla – 2003 Toyota Corolla
- Mii作成- トモダチコレクションBGM
- Mii Channel – Nintendo Wii 似顔絵チャンネル BGM
- Over The Horizon 2012 S3 – Samsung Galaxy BGM
- 01 フィジーSunburst – Webinar™ –
- Secret Garden 8888 – Yabujin
プレイリスト
上記の曲をまとめたYouTubeの再生リスト
Frutiger Aeroには、インストゥルメンタル曲が多いため作業用にもおすすめだが、2000年代に子供時代を過ごした2000s キッズには懐かしい曲が多く、記憶を呼び起こされて手が止まってしまうかも。注意が必要。
サブジャンル
Frutiger Eco
Frutiger Aeroの中でも、草木や青空、地球儀、ソーラーパネルなどの自然の要素と一緒に、高層ビルなど、近代的な風景が描かれている画像を指す。自然とテクノロジーの調和や、エコフレンドリーな雰囲気が感じられる。
Helvetica Aqua Aero (Helvetica Aqua, Aquacore)
Frutiger Aeroの中でも、水や泡、海、海の生き物、ビーチが描かれた海洋的で明るく鮮やかな画像を指す。
Frutiger Aurora
まるでオーロラのような、光が差し込んだ明るいグラデーションのデザインを指す。Windows VistaやWindows7の壁紙のようなイメージ
Dark Aero
スキューモフィズムの立体感や、光沢感はそのままに、配色が暗く重厚感のあるデザインを指す。Frutiger Aeroは大衆的な商品に多用されたが、Dark Aeroはハイエンドでビジネス向けの製品に使われることが多かった。また、コンピューター、スマートフォン、テレビ、車などの最新デバイスでよく使用されていた。
Technozen
テクノロジーと日本の禅の美学を融合したデザイン。Frutiger Aeroの中でも、よりシンプルで洗練された印象のデザインを指す。WiiやDSのデザインがその一例である。TechnozenはFrutiger Aeroの日本版とも言及されている。
Four Colors
Four Colorsは、2000年代半ばから2010年代前半にかけて、多くのデザインで採用された色使いである。特に2004年、AppleのiPod「Silhouette」広告がきっかけで注目を集めた。彩度の高い鮮やかなブルー、ピンク、キミドリ、イエローの4つが基本的な配色となる。
Vectorgarden(Floral Metro)
花、オーロラ、蝶などの自然要素をベクターアートで描く、フラットでミニマルなデザインが特徴。 フリー画像のサイトでこのようなデザインを見かけた人も多いかもしれない。
Frutiger Metro
Frutiger Metroは、2000年代の数式に基づいて点や線、曲線などを描き、画像を再現するベクターグラフィックデザインを特徴とする美学。MicrosoftのWindows 8で使用されたデザイン言語「Metro」(「歴史」の章参照)に由来している。
花や草木などの自然の要素はFrutiger Aeroと共通するが、光沢感や立体感が少なく、平面的で抽象的な図形が使用されている点が異なっている。
Frutiger Metroは、Frutiger Metro自身が多くのサブジャンルを持っているため、他のFrutiger Aeroのサブジャンルと比べて、独立した美学として確立されている。(例えば、VectorgardenはFrtugier Metroのサブジャンルとも言える)
歴史
初期(2001~2004)
2001年ごろに登場したMac OS X 10.0のAquaテーマやWindows Vista試作版、Longhorn Build 5048、Windows XP Media Center Edition 2005で、Frutiger Aeroの原型が見られた。
Frutiger Aeroは自然を感じさせる柔らかさや親しみやすさが特徴で、テクノロジーをもっと身近に感じさせるものであった。それまでの、SF的でメタリックでゴツゴツとしたY2Kのデザインとは違って、幅広い人たちに受け入れられる温かさが感じられる。
黄金期(2005~2007)
2000年代中頃から後半にかけて、Frutiger Aeroは、大きく広がりを見せた。2005年から2006年にかけて、Windows XP Media Center EditionやXbox 360、Nintendo DS Lite、Nintendo Wiiなどで続々とFrutiger Aeroのデザインが取り入れられ、そして2007年のWindows Vistaのデザインのテーマに、「Windows Aero」がデフォルトとして取り入れられ、また、初代iPhoneの発売にもスキューモフィズムが取り入れられたことで、Frutiger Aeroのデザインが主流となった。
2006年発売の「Nintendo ds Lite」は、初代の「Nintendo DS」よりもY2K感がなくなり、よりシンプルなTechnozen(サブジャンルの章で前述)的なデザインに変化した。
衰退(2012-2013)
2012年以降、スマホの普及でデザインの流行が変わり、Frutiger Aeroは少しずつ衰退していった。MicrosoftはFrutiger Metroに繋がるデザインである「Metro」と呼ぶデザイン言語を導入したWindows 8を発表した。このMetroのデザインから分かるように、立体的→平面的なデザインへの移行が見られるようになった。
2012年に発売されたFrutiger Aeroを取り入れた最後のゲーム機、Wii Uも1300万台しか売ることができず、商業的に苦戦した。
一方、Appleは2013年にiOS 7でフラットでシンプルなデザインを取り入れ、大きな注目を集めた。この頃から、フラットデザインとミニマリズムが主流になり、スキューモフィズム、Futiger Aeroは衰退した。
Wii U(2012)のホームメニューのUIデザインをNintendo Switch(2017)と比べてみる。Wii Uがシャドウや光沢を取り入れており立体的(スキューモフィズム)なのに比べて、Nintendo Switchは平面的(フラットデザイン)であることがわかる。
再流行
2017年に消費者美学研究所のSofi LeeがFrutiger Aero(フルティガーエアロ)という用語を提唱し、徐々に注目を集めた。名前の最初の部分「Frutiger」は 、フォントの「Frutiger」、「Aero」は、Windows Vistaのデザインテーマ「Windows Aero」が由来となっている。
2022年後半からは主にTiktokやRedditを通して、その懐かしさから話題となり、Tikotokではハッシュタグ「#frutigeraero」の動画が現在4000万回以上視聴されている。この流行は、主にTikTokの主要ユーザー層であるZ世代(1997年以降生まれの現在10代後半から20代前半)が、幼少期に慣れ親しんでいたデザインや音楽であることも背景にあると考えられる。
再流行の一例
Frutiger Aeroとそのサブジャンルたちは、Tikotokやコミュニティー内での盛り上がりにとどまらず、現代のポップカルチャーにも取り入れられ始めている。
Frutiger Metro風の編集
Nohluhnは、New JeansをはじめとするK-popグループの映像を引用し、Frutiger Aero, Frutiger Metro, Four colors風に編集した動画を上げている。こちらの動画で使用されている曲はPS Vitaのメニュー BGM
XG 「NEW DANCE」 MV
コーチェラ出演も決まった日本生まれのグループ、XGは「NEW DANCE」のMVで、Frutiger Aero風の建築を取り入れている。
PinkPantheress 「Nice to meet you」 MV
イギリスのシンガーのPinkPantheressは、昔のディズニーチャンネルで流れてそうな、Vectorgarden的なデザインを「Nice to meet you」のMVに取り入れている。
「約束されたはずの未来」The future we were promised.
Frutiger Aero関連の動画では、「The future we were promised」というフレーズが付け加えられることがある。ここでは、この言葉を「約束されたはずの未来」と訳したい。この言葉には、2000年代後期に描かれていた未来への期待や理想と、現実とのギャップに対する何ともいえない切なさや、ノスタルジアが込められているように感じられる。
また、Frutiger Aeroのデザインが全盛だった頃に子供時代を過ごした楽しい思い出と、現在の自分との隔たりも、強いノスタルジーや切なさを呼び起こしているのかもしれない。
参考
この美学をより深く理解するのに役立つ外部リンク、メディア情報。全部英語だが、眺めるだけでも楽しいのでぜひのぞいてみて。
- https://frutiger-aero.neocities.org/ (Frutiger Aeroのコミュニティーがまとめられているサイト。デザインがFrtuiger Aeroで凝っている。)
- Asadal.com( Frutiger Aeroでよく目にする画像が掲載されている韓国のデザイン会社Asadalのサイト)日本法人:https://creator.pixta.jp/@Asadal/illustrations
- 「Finding the Origins of Popular Frutiger Aero Images (ft. kylie boggly) 」(Frutiger Aeroでよく目にする画像の起源を探る動画)
- https://frutigeraeroarchive.org/ (Frutiger Aeroのまとめサイト。デザインがFrtuiger Aeroで凝っている。特にFrtugier Aeroの歴史が分かりやすくまとまっている。)
- Consumer Aesthetics Research Institute – Frutiger Aero(Frutiger Aeroの命名者、Sofie Leeがメンバーとして運営している消費者美学研究所のFrutiger Aeroのページ)
- https://frutiger-aero.org/ (Frutiger Aeroのまとめサイト。Windows Vistaのデザインを使っていて凝っている。特にサブジャンルの説明が詳しい。)
- https://skeuoss.net/ (Frutiger Aero関連のグッズが販売されているサイト。上記のhttps://frutiger-aero.org/ の管理者が運営しているっぽい。)
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