Vaporwaveについて必要な情報を簡潔にまとめたページ。余計な情報は少なく、必要な情報は網羅しています。入門にもいいですし、布教にもおススメ。
Vaporwaveざっくりまとめ | 🌆📺🌴 |
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Vaporwaveとは? | 1980~90年代の懐かしい音楽やコマーシャルをサンプリングして再構築される音楽、視覚芸術。ゆったりしたテンポと、リバーブやエコーで加工されたサウンドが特徴で、蒸気に包まれたような不思議な感覚がノスタルジアを醸し出す。消費主義に対する皮肉や憧れが表現されているとの説もある。 |
主要アーティスト | Vektroid James Ferraro Daniel lopatin |
起源 | 2010年代 |
キーワード | 大量消費主義、メンフィスデザイン、ギリシャ彫刻、80年代、薬物使用とディストーション、ドリーミー、ノスタルジー、日本語、メディア、コンピューター、3Dグラフィックス、オールドテク、ビーチ、贅沢なライフスタイル、コマーシャル、異国情緒、モール、スーパー、デパート、グリッチ |
カラー | パステル、ネオン、紫、ピンク、青、白 |
サブジャンル | Eccojams, Mall soft, Future funk, Sea punk, Utopian Virtual, Hypnagogic ambient |
関連する美学 | シティポップ、Seapunk、Future Funk |
Vaporwaveとは?
- Vaporwaveは、2010年代初頭にインターネットを通じて広まった音楽ジャンル、また、映像やデザインの視覚芸術全般を指す。
- 音楽的には、1980年代のファンク、ジャズ、R&B等に、ループ、ピッチダウン、チョップド&スクリュードをかけて編集される特徴がある。これによって、ノスタルジーで不思議な雰囲気を生み出している。
- Vaporwaveという名称は、2011年に音楽プロデューサーのWill (Robin)Burnettが、音楽が蒸気に包まれるような感覚を与えることからVapor(蒸気)wave(波)と名付けた。または、未発売のソフトウェアを指す「Vaporware」を暗示しているとも考えられている。
- Vaporwaveには1980年代に大量に作られ忘れ去られた人工物への哀愁や、加速する消費主義への批判が込められてると分析する人もいる。反対に、むしろこれらの消費主義の美学を讃えるものだと考える人もいる。
音楽
これをまずは聴こう!
Vaporwaveの金字塔:「リサフランク420 / 現代のコンピュー」by Macintosh Plus
この音楽からVaporwaveというジャンルが確立された。
音楽的特徴は例えるならば、子供のころ、深夜のテレビから流れる音を夢心地で聞いている感じ。
1980年代のファンク、ジャズ、R&Bなどの懐かしい音楽をピッチダウンしたりスローにしたり、同じ個所を何回もリピートして制作されている。たまに日本のコマーシャルや音楽もサンプリングされることもある。1980年代の経済的に豊かだった日本のイメージが反映されているのだろうか。
ちなみにVaporwaveの曲は、既存の音楽を許可なく使用してたりするので、著作権的に結構グレーというか、アウトな作品が多い。
代表的なアーティスト
- Vektroid (別名義: Macintosh Plus, PrismCorp Virtual Enterprises, Virtual Information Desk, dstnt, Laserdisc Visions, New Dreams Ltd)
- James Ferraro
- Daniel Lopatin (a.k.a Chuck Person, Oneohtrix Point Never, sunsetcorp)
- Skylar Spence (別名義: Saint Pepsi)
- t e l e p a t h テレパシー能力者
- 猫 シ Corp. (Catsystem Corp.)
- マクロスMACROSS 82-99
- 2814
ビジュアル
Vaporwaveの音楽が象徴的な映像と共にYouTubeにアップロードされることから分かるように、視覚芸術もまた、Vaporwaveの文化には欠かせない。
カラフルなネオンや、初期のパソコンに入っていそうなローポリの3Dグラフィック、ギリシャ彫刻、翻訳調の謎日本語テキスト、Windows 95の画面、そして熱帯風の風景といったモチーフが並ぶ。
インターネット初期の粗野なデザインや人工的な配色が、懐かしくも夢のような、不思議でシュールな世界観を作っている。
Vaporwaveの視覚芸術は、デジタル時代前のアナログな頃への憧れが表れたものとも言える。または、使われるモチーフが80~90年代の贅沢な人工物やコマーシャルであることから、ヤッピー文化や使い捨て消費文化への批判だと言及する人もいる。
カラーパレット
イラストやデザインの参考にどうぞ!
歴史
Vaporwaveのルーツは、Chillwave,hypnagogic pop, seapunkなど、エレクトロニックミュージックのさまざまなサブジャンルに遡ることができる。しかし、Vaporwaveは特に1980年代と1990年代のサウンドとビジュアルに特に焦点を当てていることで異なっている。
Daniel LopatinやJames Ferraroなどのアーティストは、レトロなサンプリングと、ゆがんだサウンドを実験的に使用することで、Vaporwaveの初期のサウンドを形作る上で重要な役割を果たした。彼らの音楽は、Vaporwaveという名前が確立する前、Eccojamsと呼ばれた。
2010年のChuck Person(Daniel Lopatin)の「Eccojams Vol. 1 」は、Vaporwaveの潮流。
こちらの「nobody here』は「Eccojams Vol. 1 」の中の一曲。
その後、Vektroidの別名義であるMacintosh Plusによる2011年のアルバムFloral Shoppe(フローラルの専門店 )がBandcampでリリースされ、Vaporwaveを象徴する作品が生まれた。ダイアナ・ロスの曲「It’s Your Move 」をスローダウンし、大幅に加工したサンプルを使用している。
YouTubeにアップされたサムネイルのヴィジュアルも相まって、アルバムの中の一曲「リサフランク420 / 現代のコンピュー」はVaporwaveの中で最も象徴的で最も知られる曲となった。
その後、Vaporwaveは進化を遂げ、「Future Funk」というサブジャンルが生まれた。Future Funkは、Vaporwaveの懐かしさはそのまま、よりアップビートでファンキーな音楽へと変化しているのが特徴。(次の項目を参照)
サブジャンル
Future Funk
Vaporwaveの懐かしい雰囲気はそのまま、Vaporwaveよりも明るく、ダンサンブルな特徴がある。
初期は1980年代のファンクやディスコを中心にサンプリングしており、視覚的な要素は少なかった。Saint Pepsiのアルバム『Hit Vibes』が代表作。
その後、日本のシティポップやアニメ音楽をサンプリングする方向へ進化した。視覚的にも、80年代の日本のアニメの映像を背景に流したり、アルバムのカバーも80年代アニメ風のイラストが多用されている。主要アーティストにはMacross 82-99やYung Bae、Night Tempoが挙げられる。
Mall Soft
まるでショッピングモールを歩いているかのような雰囲気を感じさせるジャンル。アナウンス、コマーシャル、人々の話し声、足音、時間を知らせる時計の鐘、遠くから聞こえるメロウなBGM。消費の聖地、モール。不思議な哀愁と空虚さが漂う。代表的なアーティストには猫 シ CORP.が挙げられる。
Ambient Vaporwave
Ambient Vaporwaveは、穏やかでアンビエントなサウンドが特徴。リズムやメロディーよりも、空間的な音の広がりに重点を置いており、映画のサウンドトラックのような雰囲気も持つ。代表作は2814(HKEとTelepathのコラボプロジェクト)の「新しい日の誕生」
Signalwave
テレビやラジオのコマーシャルやBGMを断片的に引用し、音が短く切り替わり続いていく特徴を持っている。まるで本当に80年代のテレビを永遠に見ているかのような感覚を呼び起こす。Fuji Grid TV(Vektroidの別名義)のPrism Genesisが代表作。
映画
『ブレードランナー』(1982)
この映画は、Vaporwaveの世界観を直接的に表しているわけではないが、1980年代の人が考えた未来像やサイバーパンク的なビジュアル、そして消費主義とテクノロジーが支配する世界観が類似している。
また、都市のネオンや霧がかった風景、ヘンテコな日本描写といった視覚要素も、Vaporwaveの雰囲気と通じるところがある。
映画のサウンドトラックも影響力が大きく、Vangelis(ヴァンゲリス)が手がけたシンセサウンドは、Vaporwaveの音楽スタイルに似た幻想的でミステリアスな雰囲気を持っている。
日本での受容
Especia「くるかな」MV
Especiaという日本のアイドルがVaporwaveコンセプトで活躍していた。時代を先取りしたコンセプトだったが、惜しくも2017年に活動停止。悲しい。
故障(EP)」が日本でバズる
YouTubeにアップされている「故障 EP」のコメント欄が日本人で埋め尽くされており、最近やっと日本でも知名度があがってきている。興味深いのは、海外の人々からは出てこない「小学生の時に見させられたVHS教育ビデオの音楽みたい」といったコメントが多かったこと。日本人だけの共通感覚なのだろうか。
裏vaporwave無職.exe.mpg
某日本の有名ユーチューバーをサンプリングしたVaporwave。インターネットミームである彼と、同じくインターネット発祥の文化の親和性は聴かずとも分かるだろう。
参考
この美学をより深く理解するのに役立つ外部リンク、メディア情報。
・Vaporwaveの名盤を網羅しているサイト: https://nuvaporwave.neocities.or
・エッコ チェンバー 地下: https://ongaku-modkey.hatenablog.com/entry/2020/04/vaporwave-terms
(才ンガク毛ドキさんのブログ。Vaporwaveについて用語や歴史が分かりやすくまとめられている。)
・書籍:新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019)
出典
・Overstandard Aesthetic Dreams: Unpacking the Rise and Influence of Vaporwave https://overstandard.dk/aesthetic-dreams-unpacking-the-rise-and-influence-of-vaporwave/
・Aesthetics Wiki Vaporwave https://aesthetics.fandom.com/wiki/Future_Funk
・Dictionary.com https://www.dictionary.com/e/slang/vaporwave
・ユリイカ 2019年12月号 特集=Vaporwave 青土社 (2019/11/28)
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